アワードシーズン、メットガラ、ファッションマンス。そして、全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)ストライキ終了後にかつての華やかさを凌ぐ勢いで復活したハリウッド作品のプレミアイベントの数々。2023年も記憶に残るレッドカーペットスタイルが豊作だったが、今年は特にフレッシュで斬新なテイストのファッションをものにしているセレブが多かった。
特に印象的だったのは、リアーナやティルダ・スウィントンなどといったベストドレッサー常連、2024年の賞レースの有力候補に躍り出ているリリー・グラッドストーンとグレタ・リー、ジェイコブ・エロルディとトロイ・シヴァンをはじめとしたメンズセレブたち。スタイリッシュであることはもちろん、その全員に共通しているのは、「自分らしさ」を前面に押し出したスタイルを確立していったという点だ。
映画や音楽、さまざまな場面でファッションを極めた15人のセレブたちを一挙ご紹介。
1. テイラー・ラッセル
昨年、映画『ボーンズ アンド オール』のプロモーションでファッションシーンに突如として現れたテイラー・ラッセルは、2023年も一歩先を行くルックを多数披露。ジョナサン・アンダーソンとロエベ(LOEWE)のミューズでもある彼女が纏ったコーデの多くは、ロエベらしいものではあったが、それ以上にラッセルの個性が光っていた。全面クリスタルに覆われたボディスからテイラードスーツ、フリンジ付きのマキシドレスまで、スタイリストのライアン・ヘイスティングスとともに作り上げたルックに身を包んだラッセルは、どこへ行ってもスポットライトを独占した。
2. ハンター・シェイファー
ダラ・アレンをスタイリストに指名するハンター・シェイファーのルックといえば、ビビッドなプリントや奇抜な装飾、メタリックなフィニッシュに露出度高めのシルエット。「ハンターと一緒に、レッドカーペットファッションの限界に挑みたかった」と今年11月、『ハンガー・ゲーム0』のプレスツアー敢行中にアレンは話した。実際にシェイファーが着用したルックを振り返ると、アップサイクルメタルから作られた花が咲き乱れるマルニ(MARNI)のアンサンブル、スキャパレリ(SCHIAPARELLI)のハンドペイント風ドレス、そしてプラダ(PRADA)のゴールドフォイルのセットアップなどがあり、二人が目指したレッドカーペットに新しい風を吹き込むルックが勢揃いだ。
3. イズールト
過去にはアレキサンダー マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)やバレンシアガ(BALENCIAGA)などといったブランドのランウェイを歩いたこともあるフランス人シンガーのイズールトは、まさにおしゃれ玄人。今年の彼女は真のレッドカーペット・スターとしての資質も垣間見せ、「強さと弱さ、その両方を感じさせてくれる服を着るのが大好き」と自身のスタイルについて『VOGUE』に語っている。その言葉通り、2023年の彼女ファッションはパワフルなムード漂うものが目立つ。フィットしたレザーのミニドレス、流線型のラインが美しいタキシード、エレガントなケープドレスなどを見事に着回した。
4. エマ・コリン
ハリウッドでドレスアップする場合、煌びやかなガウンがマストだと思われがちだが、エマ・コリンはその逆を行く、一風変わったレッドカーペットスタイルで異彩を放つ。「エマはリスクを恐れないので、彼女のためにルックを作るときはとてもワクワクします。彼女はファッションを楽しく、刺激的なものだと思っていて、物怖じません」とコリンのスタイリストのハリー・ランバートは昨年、『VOGUE』に語った。2023年はタキシードジャケットにシアーなスカートを合わせたり、ミュウミュウ(MIU MIU)のブリーフにカーディガンを合わせたりと、話題の“ノーボトム”トレンドも誰よりも小粋に着こなした。
5. ジェイコブ・エロルディ
『ソルトバーン』と『プリシラ』を筆頭に、2023年は数多くの作品に出演し、映画界に旋風を巻き起こしたジェイコブ・エロルディ。その活躍と比例するかのように、レッドカーペットルックのおしゃれ度も急激にアップ。堂々とハリウッドのベストドレッサーの仲間入りを果たした。ウェンディとニコル・フェレイラ姉妹のスタイリストデュオが組んだコーデは、シックなテーラードパンツにリボンブラウスを組み合わせたりと、毎回な意外性あるアクセントに富んでいる。彼が纏う、クラシックとコンテンポラリー、マスキュリンとフェミニンの絶妙なバランスを保ったモダンなスタイルは必見だ。
6. リアーナ
今年のメットガラに大遅刻したリアーナ。ライブ配信には間に合わなかったが、ヴァレンティノ(VALENTINO)のシルクドレスと巨大なカメリア付きのケープを着た彼女は、いつも通り期待を裏切らず、数時間の遅れも許されるようなインパクトを残した。思えばリアーナとスタイリストのジャーリール・ウィーバーは、ここ1年、「インパクト」を大切にしたファッションをあらゆる場面で披露してきている。スーパーボウルではロエベの赤いジャンプスーツを着てパフォーマンスを行い、アカデミー賞にはアライア(ALAÏA)のタイトドレスで出席。エイサップ・ロッキーとの第2子を妊娠している間も、記憶に鮮明に残るコーデを謳歌し、マタニティ・ファッションを再解釈したリアーナだった。
7. ティルダ・スウィントン
常に我が道を行くティルダ・スウィントンは、2023年も自分らしさを貫いたレッドカーペットスタイルを見せた。ジャンポール・ゴルチエ・バイ・ハイダー・アッカーマン(JEAN PAUL GAULTIER BY HAIDER ACKERMANN)の巨大なホワイトコートに、洗練されたシャネル(CHANEL)のツイード。しなやかで優美なハイダー アッカーマン(HAIDER ACKERMANN)のパンツスーツ。周りのセレブがドレスに身を包んでいても、スウィントンはシャープなテーラードアイテムを着用し、長年の担当スタイリストのジェリー・スタッフォードと選んだルックは、ほかとは一線を画す存在感を放つ。
8. エイサップ・ロッキー
パートナーであるリアーナと登場することが多いエイサップ・ロッキーは、『Fashion Killa(ファッション・キラー)』と題した曲をリリースした頃からファッショニスタとの呼び声が高く、そのセンスは今でも健在。今年はマシュー・ヘンソンにスタイリングのほとんどを任せ、ストリートウェアやスーツをメインにした「クールなパパ」スタイルを作り出した。メットガラでは、派手なビジュー付きのデニムとタータンチェックのスカートを合わせた全身グッチ(GUCCI)のカスタムルックだったが、オフのときはカジュアルなスウェットからドレッシーなブレザーまで何でも着る。その多くが、最近キャンペーンにも出演したお気に入りのブランド、ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)のものだ。
9. リリー・グラッドストーン
マーティン・スコセッシ監督の『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』でブレイクし、2024年のアワードシーズンで受賞の期待が高まっているリリー・グラッドストーン。モンタナ州ブラックフット族の出身である彼女は、ジェイミー・オクマやジェニファー・ヤンガーなど、先住民族にルーツを持つデザイナーに光を当てる機会としてレッドカーペットを活用している。そんな彼女はハイブランドのグラマラスなスタイルも着こなし、スタイリストのジェイソン・レンバートが用意したルックの中にはルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)、マルニ、ヴァレンティノなど、メゾンがランウェイで発表したばかりの新作がたびたび登場する。
10. ケンダル・ジェンナー
業界屈指のトレンドセッターであるモデルのケンダル・ジェンナー。ダニ・ミシェルやマルニ・セノフォンテなどの人気スタイリストに信頼を寄せる彼女は今年、ノーボトムとクワイエット・ラグジュアリーという2023年を象徴する2大トレンドをいち早く取り入れ、前者においては火付け役にもなった。そんなジェンナーはひと捻り効かせたファッションが得意で、メットガラにはカール・ラガーフェルドのスイムウェアからインスパイアされた、マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)のボディスーツで参加。一方、オフデューティでは誰もが羨むほどリュクスなコートの数々に身を包み、クワイエット・ラグジュアリーを後押しした。
11. ジョディ・ターナー=スミス
ジョディ・ターナー=スミスほどファッションを楽しんでいるスターはいない。ウェイマン・バナーマンとミカ・マクドナルドのスタイリストデュオが作り上げる彼女のルックは、遊び心を第一にし、フェザーをあしらったプレイフルなドレスや、この上なくセクシーなノーボトムルックなど、どれをとっても目にも鮮やか。決まったパターンのスタイルを繰り返し着るセレブもいるが、ターナー=スミスは冒険することを恐れない。彼女のファッションは常に予測不能で、2024年も想像の斜め上を行くルックを魅せてくれるに違いない。
12. グレタ・リー
映画『Past Lives(原題)』で主演を務めたグレタ・リーは、2024年の賞レース有力候補にふさわしいコーデを披露してきている。スタイリストのダニエル・ゴールドバーグとともに確立してきた独自のレッドカーペットスタイルは、ロエベ、グッチ、フェラガモ(FERRAGAMO)などといったブランドのランウェイルックも取り入れていて、彫刻的なフォルムや、体のラインを引き立てるソフトなシルエットがシグネチャー。纏うアンサンブルは比較的控えめだが、周囲の視線を釘付けにするものばかりだ。
13. メイジー・ウィリアムズ
2023年、ハイウッド1位“エキセントリック”なベストドレッサーは、間違いなくメイジー・ウィリアムズだろう。『ゲーム・オブ・スローンズ』のアリア・スターク役で知られる彼女は、今年最もエキサイティングで型破りなファッションを披露し、見る者を大いに楽しませてくれた。ファンタジーあふれるシモーン・ロシャ(SIMONE ROCHA)」のガウンからスマートなトム ブラウン(THOM BROWNE)のスーツ、近未来的なイリス ヴァン ヘルペン(IRIS VAN HERPEN)のアイテムまで、ありとあらゆるテイストを自分のものにする彼女は、どんなにアバンギャルドなルックでも難なく着こなす。
14. トロイ・シヴァン
アルバム『Something to Give Each Other』をリリースしたシンガー・ソングライターのトロイ・シヴァンは、キャリアもファッションも絶好調な1年だった。マーク・フォルネによってスタイリングされたレッドカーペットルックは、どれもエレガントでありながらどこまでも魅惑的。9月にパリで開催されたラバンヌ(RABANNE)の2024年春夏ショーには、デニムセットアップとクリスタルのブラトップという胸もとが大胆にはだけたコーデで出席し、ネットを大いに騒がせた。
15. ビヨンセ
レッドカーペットスタイルでこそないが、ビヨンセの「ルネサンス」ツアーに触れずして2023年を語ることはできない。今年最も話題となったツアーのために、ビヨンセとスタイリストのKJムーディーは、ミュグレー(MUGLER)、バルマン(BALMAIN)、リック オウエンス(RICK OWENS)など、思いつく限りすべてのラグジュアリーメゾンに声をかけ、ファッションウィーク級の唯一無二のワードローブを各公演でお披露目した。中でもツアーの顔ともいえるルックが、ロエベが手がけたシュールなハンドモチーフが目を引く、燦然と輝くボディスーツ。
Text: Christian Allaire Adaptation: Anzu Kawano
From VOGUE.COM
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